「今年のファッション、何が流行ってたっけ?」そんな疑問を感じた方も多いのではないでしょうか。2025年は、トレンドが多様化し、シーンごとに異なる流行が共存した一年でした。
今回は2025年のファッション振り返りを2回に分けてご紹介。第1回は「2025年1年間の振り返り」、第2回は「過去5年を振り返り」「2026年予想」をお届けしたいと思います。
2025年春夏・秋冬ファッションで注目された3つの流れ
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春夏は「ヴィンテージ×フェミニン」の花柄が復活
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秋冬は「パステル」と「クラシック」が両立したカラー傾向
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ジェンダーレス化とY2K再評価によるアイテムが登場
2025年のファッショントレンドは、季節ごとのテーマ性が際立っていました。春夏はフェミニンな花柄の復活が印象的で、ヴィンテージスタイルとの融合が目立ちました。秋冬は、王道カラーとパステルの意外な組み合わせが見られ、クラシックさと軽やかさが共存しています。また通年を通して、ジェンダーレスな視点やY2K要素のアップデートも存在感がありました。それでは具体的に振り返ってみましょう。
春夏は「ヴィンテージ×フェミニン」の花柄が復活

2025年春夏シーズンの注目トレンドとして、「ヴィンテージ×フェミニン」の花柄が多く登場しました。特に、壁紙のような繊細な花模様やレトロ感のある色合いが多く見られ、70年代や90年代を思わせるスタイルが各ブランドで展開されていました。この流れは、Z世代を中心とした“懐かしさ”と“新しさ”の融合を求める感性にマッチしており、SNSでも大きな話題となりました。
ブランドでは、Dries Van NotenやErdem、国内ではTOGAなどが象徴的なコレクションを発表し、クラシカルでありながら自由な着こなしを提案。セットアップやワンピースだけでなく、スカーフやバッグなど小物への応用も目立ちました。花柄=春という定番を、あえて過剰に表現する「遊び心」が今年らしさを引き立てました。
秋冬は「パステル」と「クラシック」が両立したカラー傾向

2025年秋冬のファッションは、「クラシック」と「パステル」という一見対照的なカラーが同時に注目されるという特徴的なシーズンとなりました。深みのあるバーガンディ、ネイビー、チャコールグレーといった伝統的な色合いがベースとなる一方で、ラベンダーやアイスブルー、ミントグリーンなどの淡く透明感のある色も数多く登場しました。
このカラー傾向の背景には、クラシックな装いにやわらかさや軽さを加えたいという消費者の感性が表れています。また、パステル系の色をあえてアウターやコートに用いることで、秋冬のファッションに新鮮さをもたらしました。特にJil SanderやChloé、Mame Kurogouchiなどのブランドが、上品かつ日常的に取り入れやすいスタイルを提案しています。
クラシックとパステルが交差したことで、コーディネートにおける色使いの幅が広がり、より個性的で奥行きのあるファッションが楽しめるようになった点が今年らしさと言えそうです。
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ジェンダーレス化とY2Kの再評価によるアイテムが登場

2025年のファッションを語る上で欠かせないのが、ジェンダーレス化の進行と、Y2K(2000年代初頭)スタイルの再評価です。これらの流れは、単なる「流行」の枠を超え、価値観やライフスタイルの変化と密接に関係しています。
ジェンダーレスの観点では、性別にとらわれないシルエットや素材選びがますます一般化し、特にビッグシルエットのジャケット、ロング丈のシャツ、ユニセックスのセットアップなどが多く登場しました。また、色彩面でもピンクやラベンダー、アイボリーなど、従来「女性的」とされた色を男性ファッションに取り入れるスタイルが多くに見られます。
一方、Y2K再評価の流れは、ローライズジーンズやタンクトップ、パールアクセサリーといったアイテムに象徴されます。特にZ世代を中心に、SNSでの自己表現や個性的な着こなしの一部として取り入れられ、「懐かしいのに新しい」スタイルが広がっています。
この2つのトレンドは、ファッションにおける“自由度の拡大”を示すものであり、2025年のスタイルに大きな影響を与えました。
ファッション業界を動かした5つの価値観と変化
Z世代の“自己表現”志向が主導する消費行動
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AIや3D技術導入で進む「体験するファッション」
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ブランドの“透明性”が選ばれる基準に
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サステナブルから「サーキュラー(循環型)」へ深化
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リセール市場の出現が“所有”の意味を変えた
2025年のファッション業界は、消費者の価値観の変化とテクノロジーの進化に大きく影響を受けました。特にZ世代を中心に “自己表現”志向は、ブランド選びやアイテム選定の基準を大きく変えています。また、AIや3D試着技術などの導入により、ファッションは単なる「モノ」ではなく「体験」としての側面が強調されるようになりました。
さらに、サステナビリティを超えた「サーキュラー(循環型)」という考え方の広がりや、リセール市場の拡大が、服の“所有”に対する意識にも影響を与えています。こちらも詳しく見ていきましょう!
Z世代の“自己表現”志向が主導する消費行動

Z世代のファッションにおいて、最大のキーワードは「自己表現」です。2025年はその傾向がより強くなり、トレンドを追うよりも“自分らしさ”を重視するスタイルが主流となりました。これは単に見た目の個性だけでなく、選ぶブランドや素材、その背景にあるストーリーまでも含めて「自分を語る手段」としてファッションが機能していることも意味します。
たとえば、サステナブル素材を積極的に採用しているブランドや、ジェンダーフリーなデザインを展開するレーベルが注目されるのは、Z世代が「思想やスタンスに共感できるか」を重要視している証拠です。SNSでは、「#ootd (今日のコーディネート) 」だけでなく「#selfexpression(自己表現)」や「#slowfashion(質の良いものを長く、大切に着る)」といったタグが広く使われるようになり、トレンドをなぞるのではなく、自らの価値観を打ち出すことが重視されているように感じます。
このような流れは、ブランド側にも新たな対応が求められ、消費と価値観の一体化を進めています。
AIや3D技術導入で進む「体験するファッション」

2025年のファッション業界では、「体験」に注目した技術導入が進みました。特に注目されたのが、AIを活用したスタイリング提案や、3D試着機能の普及です。髪型チェンジなど皆さんも試したことがあるのでは? これにより、消費者は画面上で自分に似合うスタイルを瞬時に確認できるようになり、ショッピングのあり方そのものが変化しつつあります。
例えば、AIによるパーソナライズ機能では、過去の購入履歴や好みに基づいて最適なコーディネートを提案してくれるため、選ぶ手間が減るだけでなく、普段は選ばないジャンルにも自然と挑戦しやすくなりました。また、ECサイトではARや3Dによる仮想試着サービスが導入され、自宅にいながらリアルに近い試着体験が可能となっています。
こうしたテクノロジーの進化は、ファッションを「買う」ものから「体験する」ものへと位置づけを変化させ、特にデジタルネイティブな世代に支持されています。
ブランドの“透明性”が選ばれる基準に

2025年のファッション業界では、消費者がブランドに求める「透明性」の重要性が一段と高まりました。これは単に製品の素材や生産過程に関する情報開示にとどまらず、企業の倫理観や社会的な立ち位置までを含む“信頼性”への評価基準の変化を意味します。
特にZ世代を中心とした若い消費者層は、価格やデザインよりも「どこで誰が、どう作ったか」「環境や人権に配慮しているか」といった情報を重視しています。そのため、サプライチェーンの可視化や、労働環境の公開、サステナビリティレポートの発行といった取り組みを強化するブランドが増加しています。
たとえばPatagoniaやStella McCartneyなどは、環境保護活動や素材のトレーサビリティを積極的に打ち出すことで、高い共感を獲得しています。こうした動きは、単なる流行ではなく、ファッション業界における新たな“信頼の尺度”として定着しつつあります。
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時代の先駆けとして歩んできた功績とは
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サステナブルから「サーキュラー(循環型)」へ深化

ここ最近のファッション業界では「サステナブル」が重要視されてきましたが、2025年はさらに一歩進んだ「サーキュラー(循環型)」という概念が注目を集めました。サステナブルが“環境負荷の削減”を重視するのに対し、サーキュラーは“資源の再活用と循環”を前提とした考え方です。
具体的には、服の製造段階からリサイクル可能な素材を使用したり、回収・再販・リメイクといった仕組みをブランド自らが整備する動きが加速しています。また、レンタルファッションや「衣料のサブスク」など、所有しない前提でファッションを楽しむ消費スタイルも広まりつつあります。
この考え方は、環境問題への意識が高いZ世代に特に支持されていて「自分の選択が社会に与える影響」を考える、新しい消費行動のひとつとして支持されています。ファッションはもはや“買って終わり”ではなく、“循環の一部”として捉えられる時代へと変化しているのでしょう。
リセール市場の出現が“所有”の意味を変えた

2025年のファッション業界では、リセール(中古再販)市場の拡大が目立つ年でもありました。これは単なる「古着ブーム」の延長ではなく、“モノの所有”という概念そのものに変化が生じていることを示しています。
多くの若者やミレニアル世代にとって、ファッションアイテムは「資産」として捉えられ、購入後に再販することを前提としたスタイル選びが一般的になりつつあります。特にラグジュアリーブランドや限定アイテムでは、リセール時の価値まで考慮した買い物をするケースも増加しています。
また、Vestiaire CollectiveやStockXといったグローバルなプラットフォームの存在も、リセール市場の信頼性を高め、購買行動の選択肢を広げています。このように、“所有=ずっと持つ”という固定観念は崩れつつあり、リセールを前提にした「流動的なファッション消費」が主流化してきました。
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いかがでしたでしょうか。
2025年の1年でファッションの柄やカラーの他に、ファッションに対する価値やサービスの提供方法など様々な変化をしているのがお分かりいただけたかと思います。面白いですね。
次回の第2回目では「2020~2025年の5年間で見るファッションの変化」と「2026年の予想」をお届けしたいと思います。
