「ヨウジヤマモト」という名前、聞いたことある人も多いはず。
黒を基調に、独自のシルエットと美学で世界のファッション界を魅了し続けるブランド「YOHJI YAMAMOTO(ヨウジヤマモト)」。そのデザインは単なる洋服を超え、着る人の個性や哲学までも引き出す存在として多くのファンに愛されています。
今回は、デザイナー・山本耀司氏の人柄や生い立ち、ブランドの特徴、そして意外と知られていない関連ブランドまで、わかりやすくご紹介します。

■デザイナー・山本耀司とは。法学部→文化服装学院へ
山本耀司(やまもとようじ)氏は、1943年東京・新宿生まれ。
戦後の混乱期、母親が営む洋裁店を手伝う中で、自然と服づくりに興味を持つようになりました。法学部を卒業後、文化服装学院で本格的にファッションを学び、1972年、自身のブランド「Y's(ワイズ)」を設立します。
その後、1981年にパリ・コレクションで「YOHJI YAMAMOTO」としてデビュー。
当時の華やかなファッションシーンにおいて、全身黒のルック、身体のラインを隠す大胆なシルエットは「黒の衝撃」と呼ばれ、世界に強烈な印象を与えました。
■ 同世代で世界に名を轟かせた日本人デザイナーたち
YOUJI YAMAMOTOと同世代の日本人デザイナーたちが世界のモード界を席巻したのも特徴です。
その筆頭が、川久保玲(かわくぼれい)氏。
1942年生まれの彼女は、自身のブランド「COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)」を通じて、解体的なデザインやアヴァンギャルドなスタイルでパリコレを震撼させました。
また、イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)氏も、山本耀司と同じく日本から世界に挑戦したデザイナーのひとり。革新的な素材開発や、プリーツ加工といった技術革新で知られ、ファッションの枠を超えたデザインで世界的な地位を築きました。
この3人はしばしば「日本のファッション界の黄金世代」と呼ばれ、1980年代から現在に至るまで、それぞれが独自の表現を追求し続けています。
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イッセイミヤケでもコレクションを発表されている和紙素材
独自の着心地がくせになる和紙:Peparアイテム
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■YOHJI YAMAMOTOの魅力とブランドの特徴
「YOHJI YAMAMOTO」のデザインは一言で言えば、反骨と美学の融合。
流行に流されず、身体のラインや性別さえも曖昧にするシルエット、徹底した黒の使い方が特徴です。

● 黒という色の哲学
山本耀司氏は「黒は謙虚であり、傲慢でもあり、すべてを拒む色」と語ります。
黒一色でありながら、素材の重なりや質感の違いによって、立体感や陰影を生み出すその技術は、単なる色使いを超えた芸術表現と評されます。
● 身体を“隠す”ことで個性を引き出すデザイン
一般的なファッションが身体を強調するのに対し、YOHJI YAMAMOTOの服は**オーバーサイズやアシンメトリー(左右非対称)**を多用し、あえて身体の輪郭を覆い隠します。
これにより、着る人の動きや存在感そのものが際立つのが特徴です。
● 代表作とブランドの象徴
ブランドの代表的なアイテムとしては、以下が有名です。
オーバーサイズのロングコート
ドレープの効いた黒のパンツ
アシンメトリーに裁断されたシャツやドレス
コレクションごとに詩的なメッセージや独特な演出も加わり、単なる洋服の発表にとどまらず、芸術や思想を表現する場として世界の注目を集め続けています。
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シンプルなデザインだけどエシカルな和紙アパレル:Pepar
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■YOHJI YAMAMOTOが展開する代表的なライン
山本耀司が手がけるYOHJI YAMAMOTOの世界は、ブランド本体だけにとどまりません。
用途やスタイルに合わせていくつかのラインが展開されており、その中でもとくに広く知られているのが以下の3つです。
● YOHJI YAMAMOTO POUR HOMME(ヨウジヤマモト プールオム)
1984年にスタートした、メンズのハイエンドコレクションライン。
パリ・メンズコレクションで毎シーズン発表され、黒を基調に、ゆったりとしたシルエットやアシンメトリーなデザイン、詩的で力強い世界観を表現しています。
ファッション業界では「ヨウジと言えばプールオム」と言われるほど、ブランドの象徴的な存在です。
近年はジェンダーレスなスタイリングも増え、男性だけでなく女性のファンからも高い支持を集めています。
● Y's(ワイズ)
YOHJI YAMAMOTOの原点ともいえる、1972年スタートのブランド。
本体コレクションよりも実用性とデイリーさに重点を置き、シンプルながら洗練されたデザインが特徴です。
黒を中心とした落ち着きのあるカラー展開や、独特のシルエットはそのままに、普段着としても取り入れやすいアイテムが揃っています。
百貨店やセレクトショップでも目にする機会が多く、「ヨウジは難しそうだけど、Y'sなら挑戦できそう」と思う人も多いラインです。
● Y-3(ワイスリー)
2002年にスポーツブランドadidas(アディダス)と山本耀司が共同でスタートしたコラボレーションライン。
山本耀司のモードなデザインと、adidasのスポーツテクノロジーが融合し、スニーカーやスポーツミックスなウェアを展開しています。
特にスニーカーは、ストリートファッション層や若い世代を中心に世界的な人気を誇り、YOHJI YAMAMOTOという名をモード界以外にも広めたきっかけのひとつとも言えます。

いかがでしたでしょうか。
YOHJI YAMAMOTOの服は、決して派手ではなく、むしろ静かで奥深い。
だからこそ、着る人自身の魅力や存在感が浮かび上がるのです。
身体のラインや性別の枠を超え、自分らしさを大切にする人にこそ選ばれてきた理由がそこにあります。
もし「周りと違う、けれど自分にしっくりくる服」を探しているなら、YOHJI YAMAMOTOの世界を覗いてみるのもよいのでは。
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