2025年6月末、パリ・アンヴァリッドを舞台に発表された、ジョナサン・アンダーソンによるディオール初のメンズ・コレクション。その全貌は、ファッション業界だけでなく、アートやカルチャーの視点からも大きな注目を集めています。
伝統を崩さず、アンダーソン流にアップデート
ディオールといえば、1947年にクリスチャン・ディオールが発表した「ニュールック」をはじめ、エレガントで構築的なスタイルが代名詞。今回のコレクションでも、その伝統はしっかりと受け継がれています。

象徴的な「Barジャケット」は、アイルランドのドネガル・ツイードで再解釈され、18世紀のウエストコートやフロックコートの要素も随所に取り入れられました。一見クラシックなアイテムながら、アンダーソンの手にかかるとどこか軽やかで、現代の空気感が漂います。

特に目を引いたのは、1948年の伝説的な「デルフト」ドレスから着想を得たカーゴショーツです。15メートルもの綿ドリル生地を贅沢に使用しながらも、仕立てはあくまでカジュアル。その絶妙なバランスは、ディオールの新たな可能性を感じさせるものでした。
バスキアからのインスピレーションと、アートと日常の融合

今回のコレクションには、現代アート界のレジェンド、ジャン=ミシェル・バスキアの影響も随所に見られます。大胆な色使いや、グラフィカルなライン、未完成の美しさをあえて残すデザインは、バスキアの持つ自由で挑発的な精神そのもの。
アンダーソンは、ファッションとアートの境界を曖昧にすることを得意とするクリエイターです。今回もその姿勢は健在で、クラシックなフォルムとアート的要素が見事に融合し、単なる“服”を超えた文化的メッセージが込められていました。
「高級=非日常」を覆す、アンダーソンの美学
このコレクションが特別なのは、決してランウェイだけの“遠い世界”ではなく、私たちの日常にも寄り添う要素がしっかりと盛り込まれていることです。

Barジャケットにチノパンやジーンズを合わせたり、伝統的なウエストコートの下にTシャツをレイヤードしたスタイリングは、まさに「ハイブランドをデイリーに落とし込む」というアンダーソンの真骨頂。これは彼がロエベで培ってきた戦略そのものであり、ディオールでもその姿勢はしっかりと継承されています。
実際、シルエットや素材こそ上質ですが、日常の延長線上で楽しめるルックが多く登場し、「特別な日に着るだけのディオール」ではなく、もっと気軽に、もっと自分らしく楽しめるブランドへと進化しているのです。
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ジョナサンアンダーソン
これまでの経歴と功績とは
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メディアが語る、新時代のディオール像
『GQ』は「ディオールをよりコンテンポラリーで、都会的なブランドに再構築した」と高く評価。カジュアル要素を加えながらも、ブランドの威厳を損なわない巧みなバランスを称賛しました。
『Wallpaper』や『Vogue Business』も、「ファッションとアートの融合」「文化と日常をつなぐ知的なコレクション」と位置づけ、アンダーソンのアプローチが単なるデザインの刷新にとどまらず、ブランドの文化的価値を押し上げている点に注目しています。
一方、『The Cut』は、華やかさの抑制と静謐な演出を「意図的な知性の表れ」と評価しつつ、今後レディースやクチュールでさらに大胆な変化が見られるのではと予測しています。
早くも話題沸騰、「ブックトート」は次なるITアイテムへ

今回のコレクションの中でも、特に注目を集めているのが、名作文学の表紙を思わせるデザインが施された「ブックトート」です。知的な遊び心と実用性を兼ね備えたこのバッグは、早くも多くのメディアが「次なるITアイテム」と予想するほどの人気ぶり。
ブランドの誇りと日常使いのしやすさが共存するアイテムは、アンダーソンが得意とする“さりげない主張”の象徴と言えるでしょう。
ディオールはもっと自由に、もっと私たちの日常へ

ジョナサン・アンダーソンによる初のディオールは、伝統を守りながらも、アートと日常、エレガンスとカジュアルが見事に共存したコレクションでした。それは「ハイブランドは特別なもの」という既成概念を覆し、もっと自由に、もっと自分らしく楽しむための提案でもあるかのようです。
Peparもまた、和紙という伝統素材を現代的にアップデートし、日常に寄り添う服作りを大切にしています。アンダーソンが示した「伝統と日常の融合」は、私たちのブランドのものづくりとも通じる考え方です。
これからも、自分の価値観を表現する“選択”として、ファッションをもっと身近に、もっと自由に楽しんでみませんか